【議事録】法務委員会質問(会社法について)

平成26年05月20日 法務委員会

○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いいたします。
私は、今日は、この会社法の改正が成立した場合にどのように運用されるのか、また実務にどのように影響が与えられるのかといった視点で質問したいと思います。
先ほどの小川委員のちょっと続きのような形になってしまうのかもしれませんが、まず、株式等売渡し請求について伺いたいと思います。
売渡し株主、少数株主が、その言い渡された対価が不公正である、適正ではない、安いよということを主張しようとする場合、どのような制度が利用できるのか、まず確認でお願いいたします。

○政府参考人(深山卓也君) まず、売渡し株式の売買価格に不服があるという場合には、売渡し株主が、取得日の二十日前の日から取得日の前日までの間ですけれども、裁判所に対して、その有する売渡し株式の売買価格の決定の申立てをすることができます。また、売渡し株式の価格が著しく不当である場合には、売渡し株主はその全部の取得の差止め請求をすることもできます。これらに加えて、売渡し株式の売買価格が不当であることは、事後的な救済手段ですけれども、取得の無効の訴えにおける無効事由ということになると解されます。
さらに、対象会社の取締役が売渡し請求を承認いたしますが、その際に対価が不当であるのに売渡し株主への配慮を怠って承認をしてしまった場合には、善管注意義務違反ということで損害賠償責任を負うということもあると思います。

○行田邦子君 対価が不公正である、安いということを少数株主、売渡し株主が思った場合には、価格決定の申立てだけではなく差止め請求も不適正価格ということが事由になるということ、それから事後の取得無効の訴え、この点においても価格が不適正であるということが原因になり得るということであると思います。
そこで、続けて、裁判所に質問させていただきたいんですけれども、この制度が導入されると、売渡し株主の保護として株式等売渡し請求において価格決定の申立てということがなされる、こうした事件が起きる可能性があるわけですけれども、そのときに裁判所としては適正な価格というのを判断しなければならなくなります。この際にどのような基準で適正な価格というのを判断するのでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(永野厚郎君) お答えいたします。
現在、株式の価格決定の請求事件というのが会社法の中でございまして、全国で新受件数が平成二十五年に百三十八件ございます。平成二十一年以降は毎年百件を超える申立てがなされているところであります。
こういった事件におきまして適正な価格を決定していくに当たっては、やはり専門的な知見といったものが必要になってまいります。そこで、裁判所としては、まずは当事者の方に、当事者と申しますのは株主とそれから株式会社でございますけれども、そちらの方に専門的な意見書、専門家の意見書の提出を促すと。さらに、必要に応じて鑑定や専門委員を活用するといったような運用上の工夫を行って、適正な価格の決定に努めているところでございます。
今回、改正法が成立してキャッシュアウトの制度が導入された場合には、これまでの運用の実績も踏まえまして、法の趣旨にかなった適正、迅速な裁判が実現できるように努めてまいりたいと考えております。

○行田邦子君 今もう既に年間で百三十八件、こうした価格決定の判断というのがなされているわけでありますけれども、事件があるわけでありますけれども、専門的な知見を積み重ねていって、今後、この法改正が成立したとすると、更にこうした価格決定の申立てということも増えることが想定されますので、適正な判断基準というのを設けていただきたいというふうに思います。
局長に質問をさせていただきます。
先日の最後の私の質問のところで、ちょっと時間が足らずに御答弁が短かったんですけれども、再度伺いたいと思うんですが、この株式等売渡し請求制度においてなんですけれども、取締役の少数株主、売渡し株主の利益を配慮するという善管注意義務があるのかという質問に対して、ありますということだったんですが、そのときに制度設計上あるというような御答弁をされました。ここの部分がよく理解ができないのですが、改めて御答弁をお願いいたします。

○政府参考人(深山卓也君) この株式等の売渡し請求がされますと、対象会社の取締役、あるいは取締役会がある場合は取締役会ですけれども、承認をするかどうかという判断をするということになります。
承認をしなければこの手続は進まないということになるわけですが、こういった対象会社の取締役あるいは取締役会の承認を要するという制度自体が置かれている趣旨のことを、私はちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、こういった制度が設けられている趣旨から見て、このときの取締役あるいは取締役会の負っている善管注意義務の内容として少数株主の利益に配慮するということが含まれているんですと、こういうことを申し上げたかったのでございます。

○行田邦子君 今改めて御答弁伺っても、ちょっと理解ができないんです。
百七十九条の三の三に書かれているんですけれども、これは対象会社の承認というところですが、「取締役会設置会社が第一項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。」と確かに書かれているんですけれども、この条文をもってして、だから取締役には少数株主の利益に配慮するという善管注意義務が制度上あるよというふうには言えないのではないかなというふうに私は思っているんですけれども、再度、いかがでしょうか。

○政府参考人(深山卓也君) そもそも論で申し上げますと、もう議員御案内のとおりですが、取締役は会社との関係が委任関係に立っているということから、会社に対して善管注意義務を負っているということになります。会社というのは、更にその実質を捉えれば全株主ということになります。全株主に対して善管注意義務を負っていると言ってよろしいのですが、この局面では九割を超える特別支配株主が会社に対して承認を求めるという、そういう手続です。
その承認を求めるという手続を置いた趣旨は、九割の株主は承認してほしい、つまり売渡しをしてほしいと言ってきているわけですから、残りの一割の株主の利益を考えると。そのために、対象会社の取締役、あるいは取締役会があれば取締役会ですけれども、の判断、承認を求めているんだと。こういう仕組みが置かれていることを考えると、一般的な意味での善管注意義務は会社に負っている、全株主に負っていると言えても、大多数の株主が請求をしてきたことを承認するかどうかという判断を取締役が善管注意義務を負ってするというときに何を考えるかというと、少数株主の利益が害されていないか、公正に扱われているかということを善管注意義務の内容として判断をすることになると、そういうことを申し上げたかったんでございます。

○行田邦子君 この条文だけではその理解が私はできないというふうに思っていますけれども、仮にこの会社法が成立したとして、今後、政省令などで、この条文の趣旨というか、この制度の中には、取締役会で承認しなければいけないという、制度上、取締役には少数株主の利益を配慮するという善管注意義務があるんだということが明らかになるような手だてを打つおつもりでしょうか。

○政府参考人(深山卓也君) 売渡し請求を特別支配株主が会社に対してしてその承認を求める際には、一定の事項を会社に通知するということが法定されております。その中で一部法務省令に委任されている事項がございまして、その事項の中で、少数株主の利益に配慮をして、対価の支払資金の調達のめどがどうなっているかというようなことを法務省令で規定をして、それを会社、取締役にちゃんと伝えると。つまり、判断の内容が少数株主の保護の観点から条件が適正かということであるから、それに資する情報を通知事項として通知するということを法務省令で規定することを考えております。

○行田邦子君 この制度上、私は取締役は非常に難しい判断を迫られるんではないかなと思っていまして、一般的にはというか、私の理解では、善管注意義務というのは取締役、役員は会社に対して負っていると。ただ、先ほどの御答弁ですと、特にこの制度上は、それだけではなくて、取締役というのは善管注意義務を株主に対しても負っていると、それは株主全体ということであると思います。
そうすると、この制度を売渡し株主が使う、売渡し株主が言い渡された対価が不適正だというようなことを主張した場合など、そのときに取締役の責任というのはどうなるのかというのが非常に難しいなと思うんですが、会社の利益とそれから少数株主の利益が相反するということは大いに起こり得ると思います。そしてさらに、十分の九以上持っていて完全に一〇〇%持ちたいと言っている特別支配株主の利益と少数株主の利益というのが相反するということも十分起こり得ると思います。安く買いたい株主と、それからできれば高く買ってほしい株主、これはもう利益が相反するんです。
ところが、取締役というのは両方に対してその利益に配慮しなければいけないという善管注意義務を負っているというふうになると、一体、では、その取締役の善管注意義務というのはどのように解釈すればいいのかということを大臣にお伺いしたいんですが。

○国務大臣(谷垣禎一君) 行田委員がおっしゃるように、特別支配株主は、恐らく一般的に言えば、少しでも安く買いたい、それから売渡し株主は少しでも高く売りたいと考えるのは当然のことですから、利益相反になると。したがって、行田委員がおっしゃるように、取締役ないし取締役会は難しい判断を迫られるということだろうと。しかし、おっしゃいましたように、善管注意義務は、取締役の善管注意義務というのを、何というんでしょうか、解釈規定みたいなものは多分私の知る限りないと思いますが、一般的には会社に負う、それから、会社ということはひいては全株主に善管注意義務を負っているということでございますが、ここから先はむしろこの制度の立て付けによるんだろうと思います。
多数の支配株主が承認してくれということ自体は、もう彼は了承している、了承というか、当然それを望んでいるわけですね。そうすると、承認するかどうかと、わざわざここでそういう要請をしているということは、承認するときに考えることは、利益相反に当たる場合のその少数株主の利益をどう考えるかが善管注意義務の内容になる、こういうことだろうと私は思います。

○行田邦子君 そうすると、改めて局長に伺いたいんですけれども、この場合、会社の利益になったとしても、あるいは特定支配株主の利益になったとしても、少数株主の利益を害する価格であるというふうに判断される場合は、取締役会は承認をすべきではないんでしょうか。

○政府参考人(深山卓也君) 売渡し株主、少数株主の利益が公正に扱われていない、侵害されているという場合であれば、それは承認してはいけない、善管注意義務違反になってしまうと、こういうことだと思います。

○行田邦子君 この法律の条文ではそういったことは読み取れないと思いますので、もしそういう趣旨であるならば、今後の法務省令でその法の趣旨というものを明らかにしていただきたいというふうに思います。
それでは次に、詐害的会社分割における債権者の保護について伺いたいと思います。
会社分割が行われることによって、優良な事業や採算が見込まれる事業だけが新しい会社、承継会社に引き継がれてしまうと。そうすると、残存債権者というのが不利益を被ってしまうということで、新しい会社、承継会社に対して債務の履行の請求ができるといった保護規定だというふうに理解をしていますけれども、そこで、この保護規定を利用して残存債権者が承継会社に対して履行請求の訴訟を行っている最中に分割会社、元の会社が破産手続を行うと、破産手続を開始した場合、この規定上だと請求権は行使できなくなるということであります。
その場合の質問なんですけれども、訴訟は無意味になってしまうということだと思いますけれども、そうすると、これまでに訴訟に掛かった費用というのは、これはその残存債権者が全て負担することになるんでしょうか。

○政府参考人(深山卓也君) 確かに、委員御指摘のとおり、直接請求権を行使して訴訟提起中に分割会社に破産手続が開始したということになりますと、これは明文の規定のあるところですけれども、この直接請求権を行使することができなくなってしまいますので、この訴訟は請求棄却ということになって原告の敗訴ということになります。
そうしますと、その訴訟費用というのは原則として敗訴者負担の原則になっておりますので、残存債権者がその訴訟費用、それまでに掛かった費用は負担することにならざるを得ないということになると思います。

○行田邦子君 それでは、ちょっと時間も限られていますので、多重代表訴訟について、最後の質問を大臣にさせていただきたいと思います。
多重代表訴訟を提起できる対象というのは非常に今回は限定されることになりました。完全親会社の株式、議決権の一%以上を六か月以上保有している株主が提訴ができますと。対象となる完全子会社というのは、株式の帳簿価額がその完全親会社の総資産額の五分の一を超える重要な子会社というふうな規定になっていて、上場会社の場合、非常にこういうケースに当てはまるのは数少ないのかなというふうに思っています。
ただ一方で、非上場の中小企業の場合を考えると、このケースが当てはめられる会社というのは結構、まああるのかなというふうに思っていまして、例えば、長男が親会社の社長で、次男が完全子会社の社長で、三男がまた別の完全子会社の社長といった、このような同族経営といったことも結構見られます。そうした場合に、例えばなんですけれども、親族間での相続の争いなどが起きたときに、この多重代表訴訟という制度を利用するというようなことも考えられるかなというふうに思っています。そうすると、そもそもの多重代表訴訟という制度の趣旨とずれたところで利用されてしまうのではないかというおそれがありますが、この点いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 確かに、多重代表訴訟は上場会社に限定しているというわけでもありませんし、また、一%以上を有する株主、これ大企業でもないとは私は思いませんが、一般的に言えば、大企業よりも中小企業の方が、中小企業は最終完全親会社である場合の方が一%以上の株を持っているということが多いんだろうと思うんです。
しかし、これ八百四十七条の第三の第一項ただし書に記載しておりますが、この多重代表訴訟制度の創設の趣旨や目的に反するような濫用的な事例、つまり多重代表訴訟が完全親会社の株主又は第三者の不正な利益を図ることを目的とするような場合、あるいは完全子会社、あるいは最終完全親会社等に損害を加えることを目的とするような場合にはこの多重代表訴訟は提起できないと書いてございます。
ですから、中小企業の場合でも、この創設した趣旨に反するようなものはあくまで許されるわけではないと、今後もそのような運用が行われるだろうと思います。

○行田邦子君 御答弁ありがとうございます。
最後なんですけれども、一言申し上げたいと思います。
今回のこの会社法の一部改正の法律案の概要、法務省が作られたこのペーパーなんですけれども、私は非常にこれは不親切だなというふうに思っていまして、全部で八枚ですけれども、ここに書かれていない、非常に会社に対して、株主に対して影響を与えるような制度変更というのはたくさん今回の法改正で盛り込まれているわけでありますけれども、全くここには書かれていません。第三者の割当て増資とか、それからキャッシュアウトのことも全く書かれていません。説明としては非常に不十分だったということを感じております。次回からきちんと法改正を審議をする国会議員に対して丁寧な説明をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

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