平成28年11月16日 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会(TPP特別委員会)
○行田邦子君 無所属クラブ、行田邦子です。よろしくお願いいたします。
一昨日の質疑におきましても少し触れましたけれども、アメリカの次期大統領のトランプ氏は、自分は自由貿易は大好きなんだ、けれどもTPPは駄目と、なぜならば多国間の交渉だから、貿易交渉は二国間でやるべきなんだということを言っています。また、一方で、TPPは、そもそも経済規模からして、これはもう実質的な日米FTAであるという意見もあります。TPPの締約国十二か国のGDPのうちで日米が占める割合が約八割でありますので、そのようなことが言われているということであります。
それで、まず大臣に伺いたいと思うんですけれども、日本がアメリカとの二国間協定ではなくて多国間の協定を結ぶ意義、メリットは何なんでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 行田委員にお答えいたします。
我が国の企業がどこで生産をしたり調達をしているかということを見ますと、やはり自分たちに、例えば人件費が安い、素材産業でいうならば、その素材産業の部品、部分のものが入ってくる、いわゆるそのバリューチェーンを間違いなくアジア太平洋地域で広範に展開しているのが現状だと思っております。TPP協定は、言うならば、その地域において二十一世紀型の新たなルールを構築して、自由、公正な巨大な一つのマーケットをつくり上げるものである、もう再三お話をさせていただいております。
その上で、やはり自由、民主主義、基本的人権、法の支配といったような基本的な価値を有する国々がその地域の中で経済のきずなを強めるということは、今日の委員会でも、RCEPの議論等々で中国の存在についての御議論がございましたけれども、やはりその地域の中で連携を深めていく意味の戦略性の意義ということも忘れてはならないと思っております。
また、ルールの面での具体的なメリットとして言わせていただきますと、例えばですけれども原産地規則。交渉の結果、TPP締約国十二か国であればどこでも、製造して組み立てていけば、部品を日本から持っていってメキシコでつくったとしてもメード・イン・TPPとして関税引下げのメリットをより広い地域で受けることが可能となります。企業サイドからいえば、TPP域内であればそれぞれの事情に応じて新たに自由なサプライチェーンというものを構築することが可能になった。
こうした点に、委員が御指摘いただいておりますこの多国間協議の意義というものがあるのではないかと考えております。
○行田邦子君 今大臣がおっしゃられたように、確かに、例えば原産地規則などというものは、これは二国間を幾ら積み上げていってもなし得るものではないということであります。
日本はこれまでTPPの締約国の中で八か国ともう既に二国間の協定を結んでいます。そういうことからすると、残っているのはアメリカ、ニュージーランド、カナダ、この三か国なんですけれども、であれば、二国間でいいんだったらば、この三か国と個々に結べばいいじゃないかという議論にもなるかもしれませんけれども、やはり二国間ではどうしてもより広域的な環太平洋、アジアの共通ルールは作り得ないということであると私も理解をしております。
それで、続けて伺いたいんですけれども、それでは、二国間と多国間の違いということで、交渉という側面で伺いたいと思います。
日本はこれまで、先ほども申し上げたように、日本はこれまで二国間のFTA、EPAを中心に締結をしてきました。十四か国との二国間のFTA、EPAを結んできたわけでありますけれども、この度のTPPというのは日本にとって初めてのハイレベルのマルチの協定の交渉であったというふうに理解をしております。
そこで伺いたいんですけれども、日本が交渉を行う上で、多国間交渉は二国間交渉と比較をしてどのような利点があるのか、そしてまたどのような困難な点があったのかをお聞かせいただけますでしょうか。
○政府参考人(澁谷和久君) お答え申し上げます。
私は、二〇一三年の七月、マレーシアのコタキナバルで初めてTPPの交渉会合に日本が参加してから、昨年十月、アトランタで大筋合意するまで、最初から最後までずっと交渉の現場にいたものでございますので、そういう立場から、ちょっと個人的な感想も含めて申し上げたいと思いますが、TPPは十二か国による交渉でございます。三十章にもわたる大変幅広い分野を扱うものでございます。それぞれの分野でハイスタンダード、高い水準を目指すという元々大変厳しい交渉だったわけでございます。
バイの交渉との違いをあえて申し上げるとすると、例えば関税中心のバイの交渉の場合、相手方が関税を既にかなりの品目を開放している場合は、こちらが一方的に要望されるばかりということで非常に難しい交渉になるわけなんですけれども、TPPの場合は幅広い分野を全体をパッケージとして扱ったということでございます。率直に申し上げれば、ある分野である国と対立をしても別な分野ではその国と共闘できるという、しかも交渉の進捗に応じてその組合せも変わるという、そういうダイナミズムが特徴だというふうに申し上げられると思います。我が国はそうしたマルチの特徴を十分生かして交渉してきたつもりでございます。
我が国が交渉に参加して以降、TPP、それまでのキャッチフレーズはハイスタンダード、高い水準ということだったんですが、それに加えまして、バランスの取れた協定というのがキャッチフレーズになってございます。バランスが取れたという趣旨は、例えば関税交渉だけではなくて非関税分野も含めてバランスの取れた結果を目指す、また、各国がどうしても譲れないセンシティビティー、これは国によって分野が違いますが、それらには最終的には配慮するという各国の利害のバランスに留意した合意結果となった、これはマルチの交渉だからこそできたことだというふうに考えております。
マイナス面をあえて申し上げるとすると、これも一概には言えないのかもしれませんが、バイの交渉の場合は最終局面では一気に進むということが往々にしてあるわけですけれども、TPPの場合、やはり十二か国の交渉ということもございまして、大筋合意までやや時間が掛かったという、そういう嫌いがあるのではないかというふうに思います。
○行田邦子君 冒頭私が申し上げたトランプ氏の考え方なんですけれども、多国間ではなくて二国間でやるべきだと。トランプ氏はこうも言っています。なぜならば、アメリカが有利になるからということも言っています。だから二国間の方がいいんだということです。
この例えが適切かどうか分かりませんけれども、今のお話を、御答弁を聞いていまして思ったんですけれども、私も大好きなドラえもんを思い出しました。ドラえもんの世界では、のび太は、ジャイアンに対して言いたいことがあるときは一対一で話はしないんですね。ドラえもんがいれば別なんですけれども、ドラえもんがいない場合は一対一で決して話はしないんです。どうするかというと、スネ夫とか静香ちゃんを連れていって、みんなで話しましょうよと。静香ちゃんやそれからスネ夫にも言いたいことを言わせて、そして自分も言うというような戦略をたしかのび太は取っていたなと思いますので、ちょっとこれが例えが適切かどうか分かりませんけれども、ちょっと今ドラえもんのことをふと思い出しました。
それでは、次の質問に移りたいと思います。
第二十三章、開発章について伺いたいと思うんですけれども、TPPの特徴の一つとして、分野横断的なチャプターが設けられているということが言われています。その一つが第二十三章、開発章なんですけれども、ただ、TPPの特徴だと言われている割には、衆議院の審議でも余り議論がなされていなかったようでありますし、いろんな有識者の出された論文などを、レポートを見ても余りここには触れられていないということだと思いますので、今日は少し何点か伺いたいと思います。
まず、私の認識ですと、これまで日本が締結したEPA、そしてまた日本以外の他の国・地域同士のEPA、FTAなどにおいて開発について章立てされているものはなかったと、こういうふうに思っております。
そこで伺いたいんですけれども、TPP協定に開発章が盛り込まれた経緯、背景についてお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(石原伸晃君) 他国が締結いたしますEPAやFTAを網羅的に把握する立場じゃございませんけれども、少なくとも我が国が締結してきたEPA等々では開発章というものはございませんでして、まさに委員の御指摘のとおりだと思います。
じゃ、何でこれがこの二十三章という形で入ってきたのかということでございますけれども、やはり、委員も先ほど意見を御開陳されていた中で、高いレベルの貿易・投資のルールを構築する、その一方で、TPPの加盟国の中にはいろいろな国、のび太もいればジャイアンもいるということだと思っております。その中で全ての加盟国が貿易や投資を通じまして恩恵を受ける必要があるんだと思います。
そのために、いわゆる、ちょっと日本語としては難しい言葉ですけれども、包摂的な経済成長、いわゆるインクルーシブエコノミックグロースですか、を促進する観点から、やはり貧困は削減しなければいけないよね、午前中の議論でもこの雇用の話が矢田さんから出ておりましたけれども、その雇用の機会の創出、そしてそういうものをやるための開発を支援していくということが重要であるということが御議論になってこの章が設けられたと承知をしているところでございます。
○行田邦子君 続けて伺いたいんですけれども、この二十三章の内容を見ていますと、ちょっと何かにやや似ているなというか共通している部分があるなと思ったのが、国連のMDGs、ミレニアム開発目標、それからSDGs、持続可能な開発目標など、こうした国連の枠組みなんですけれども、一部重なるかなと思っております。
国連の枠組みでこのような貧困の削減とかあるいは女性の地位向上、活躍ということに取り組んでいますけれども、あえてなぜこのTPPという経済連携協定、つまり経済連携協定ですから国益と国益がぶつかり合って、そして国益が合致することによって成立するこの経済連携協定の中であえてこのような開発ということを盛り込んだのか、その意図と意義についてお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、御指摘のSDGsですが、昨年九月、国連において採択されたMDGsの後継目標です。二〇三〇年までの国際目標ということで、経済にとどまらず、社会、環境、こうした三つの分野にわたって取り組んでいく、誰一人取り残されない持続可能な社会の実現を目指していく、こうした取組です。
そして、一方、経済連携におけるこの開発の項目ですが、まず、この開発という章立てが行われているのはTPPが初めてですが、過去、我が国が締結した経済連携においても協力という章は数多くあります。この協力章において開発とか協力について規定をしてきたということですが、こうした経済連携における開発ですとか協力、これは内容を見ますと、人材育成ですとか技術支援によって協定を着実に実施していくための体制を強化し、そして経済成長を図り、そして開発も実現する、こういったことになっています。要は、協定の目的を実現するために経済の取組を進めていく、こういった内容になっています。
よって、SDGs等の大きな、国連におけるこの目標は、経済のみならず社会ですとか環境、こういった幅広い分野に焦点を当てている、経済連携の方は、経済への取組を中心に協定の目標を、目的を実現する、こういったことになっています。TPPの場合は少しその範囲が広がっているというのは事実であります。
このように、それぞれ特徴がありますので、経済への取組ということにおいては皆共通しています。ただ、一方で、それ以外の特徴がありますので、開発とか協力の取組においてそれぞれの特徴を生かしながら全体として開発を盛り上げていく、こういった取組を進めていくべきものであると考えています。
○行田邦子君 TPPは極めて高いレベルのルールだということで、TPPに関心を持っている国、既に何か国か名前が挙がっていますけれども、その中には必ずしも政府や民間部門の体制が十分に整備されていないという国もあろうかと思います。そうした国が今後TPPに入っていくときに、こうした二十三章が章立てされているということ、私はこれは一つ重要なことだと思っていますし、そして、そのときに先進国日本がどのような協力をしてくれるのか、そしてまたそういう用意があるのかということを示すことというのは、私は更にこのTPPが、これが参加国が増えて、そしてより広い地域のルールになっていくためにも役立つと思っています。
そうした視点で伺いたいんですけれども、それでは、第二十三章、この開発章の内容を踏まえて、日本としては具体的にどのような取組を行っていくつもりなのか、できる限り具体的にお聞かせいただきたいと思います。そしてまた、このような取組を行うことでどのような効果が期待されますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 我が国がこれまで締結してきたEPAにおける協力章と同様に、TPPにおきましては、協力及び能力開発章ですとか開発章、こうした御指摘の第二十三章を始めとする章立てが行われており、協力活動を実施すること、これが想定されているわけですが、対象分野、具体的に申し上げるならば、一つは農業、工業、サービス、二つ目として教育、文化、ジェンダー、三つ目として災害リスクの管理等という形で例示をされています。例示ですからこれに限るものではありませんが、こういったものがまず対象分野としては中心になります。そして、協力の在り方としては、セミナー、共同事業、技術支援、専門家交流等が想定されています。さらに、具体的には、これはTPPであれば、これは発効後更に検討されるということになるんだと思います。
我が国としましては、こうした協定の規定を活用しながら、開発協力における豊富な経験を生かして積極的に関与していきたいと考えます。そして、そのことが、委員御指摘のように、各締約国が着実にTPP協定の高い水準を実施することにもなると思いますし、さらにはTPPへの関心国、地域の拡大にも寄与していく、こうした効果につなげていきたいと、このように考えます。
○行田邦子君 どうもこの開発の章で具体的にどういったことをするのか、いまいちイメージがしにくい、分かりにくいんですけれども、協力ならばイメージがしやすいんですけれども、開発というと、ちょっと今の御答弁聞いていても余り具体的にイメージが残念ながらできませんでしたが、例えばなんですけれども、TPPによって恩恵にあずかる企業があります。こうした民間企業に対しても、自主的な取組というものを促すというのも一つあるのかなというふうに思っております。
例えば、パナソニックなどはソーラーランタン十万台プロジェクトというのを自主的に取り組んでいると、こういった例もありますので、これはあくまでも企業の自主的な取組ではありますけれども、そういったことも促すということもあるのかなと思っております。
それで、最後の質問なんですけれども、この第二十三章の四条なんですけれども、ここには女性及び経済成長ということが規定をされています。ただ、大変残念ながら、我が国、先進国なんですけれども、この女性の言ってみれば活躍ということにおきましては、ほかのTPP参加国十一か国よりか随分と遅れてしまっています。ジェンダーギャップ指数、二〇一五年で見ますと、調べてみたんですけれども、TPP十二か国のうち、日本は百一位なんですけれども、十一位ということです。日本より下なのがマレーシアだけということで、ただ、マレーシアは企業の管理職に占める女性の割合は日本より高いという状況ですので、恐らく経済分野ではマレーシアの方が女性の参画が進んでいるのではないかなとも思っています。
日本はむしろ、この分野におきましては他の国から協力を仰いだり、また支援をいただかなければいけないというような状況だと思っておりますけれども、この第二十三章の四条を踏まえて、日本としては国内における経済分野での女性の参画と活躍についてほかの国とどのような協力活動が考えられますでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の第二十三章四条ですが、具体的には、女性の能力向上や市場へのアクセスを容易にすること、指導的地位にある女性のネットワークの発展、そして職場での女性の働き方に関するベストプラクティス等に関する情報交換を行うこと、こういった規定が盛り込まれています。
そして、日本の取組、遅れているのではないかという御指摘をいただきました。しかし、我が国としましても今の内閣において、女性が輝く社会を実現する、こういったことを標榜し、努力を続けております。例えば、二〇一四年から国際女性会議WAW!を開催するなどの取組、さらには、今年、G7議長国として伊勢志摩サミットにおいても、女性を優先アジェンダに掲げるとともに、女性の主流化を分野横断的に後押しするための強いメッセージ、こういったものを発信するなど取組を続けております。
是非、TPP協定の下においても、締約国と連携しながら、女性能力の向上、ネットワークの拡大、こうしたものにしっかり取り組んでいきたいと考えます。
○行田邦子君 せっかく章立てをしたわけですので、この二十三章がしっかりとワークするように日本としても取り組んでいただきますことをお願いをして、質問を終わります。