平成28年10月20日 国土交通委員会
○行田邦子君 無所属クラブの行田邦子です。よろしくお願いいたします。
私は、今日は建設業における社会保険等の未加入対策について伺わせていただきます。
本来社会保険等に加入する法的義務があるにもかかわらず加入していないという可能性のある事業所が七十九万社、そして労働者の数でいうと二百万人ほどいるのではないかということが厚生労働省の推計で出されまして、そして、今国会でも議論となっております。そうした中で、国土交通省におきましては、平成二十三年度頃から建設業においての社会保険等の未加入対策を徹底するよう取り組んできています。
その内容を見ますと、かなり強力に推し進めているという印象を受けるわけでありますけれども、このような強力に社会保険未加入対策を進めている産業、業界というのはほかの産業を見渡しても私は見当たらないのではないかと思っておりますけれども、まず大臣に伺いたいと思います。
建設業において社会保険未加入対策をこれほどまでに強力に推進する、その必要性と理由についてお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 建設産業は、少子高齢化の進展に伴いまして、高齢化や若年入職者の不足という構造的な課題に直面をしております。こういった中で担い手確保のために技能労働者の処遇改善に取り組んでいるところでございますが、その際、適切な賃金水準の確保はもちろんでありますけれども、社会保険の加入促進が重要であります。
建設業で働く方々が社会保険に加入できないような状況では、若者の入職を増やしていくことは困難というふうに考えております。建設業の持続的な発展に必要な人材を確保していくためには、社会保険の加入を進めることが不可欠であると考えているところでございます。
○行田邦子君 今大臣御答弁されたように、若者の入職者がなかなか増えないというこの業界の現状を見れば、やはり社会保険の加入の徹底ということは、業界として、また国土交通省としても推し進めていくべきだと、この点については私も賛成でございます。
そして、この国土交通省の取組が功を奏していると思いますけれども、数字を見ますと、過去三年間、平成二十四年度から平成二十七年度、この三年間で、いわゆる三保険、雇用保険とそれから健康保険また厚生年金と、この三保険全てに加入をしている会社というのは、企業別に見ますと八七%から九五%に上昇して、労働者別でいいますと五七%から七二%と、実績を上げていると言えるかと思います。
ただ、元請、それから下請、二次下請と、この別に見ていきますと、元請よりか一次下請の方が加入が低い、一次下請よりか二次下請の方が更に低いというような状況になっているということを何とか改善していかなければいけないというふうに思っておりまして、その一つの方策として、私がこれを徹底していただきたいと思っておりますのが、見積書におきまして法定福利費の内訳を明示するということを、これを徹底させるということだというふうに思っております。
そこで、お手元にお配りをしておりますけれども、これは全国鉄筋工事業協会が出しております標準見積書の作成例ということであります。これを見ていても思うんですけれども、皆様にお配りしているのは表紙一枚なんですけれども、この見積り一枚を作るために様々な歩掛かりの計算をしたりとかあるいは算定をしなければいけない、これを一枚出すためにかなり細かい積算が必要であるということでありますけれども、これを見ていて思うんですけれども、この全国鉄筋工事業協会はかなり丁寧なマニュアルを作っているとは思いますけれども、必ずしも職種によってはマニュアルが余り丁寧ではなかったり、分かりにくかったり、あるいは小規模の事業所にとっては非常にハードルが高い、作りにくいということもあろうかと思っておりますし、アンケートでもこのようなことが指摘をされています。
小規模事業所にも使いやすい標準見積書のフォーマットに改正する、また分かりやすいマニュアルを作成すべきではないかと思いますけれども、局長、いかがでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) お答えをいたします。
今御指摘がございましたように、元請企業から下請企業に対しまして適切に法定福利費が支払われるためには、法定福利費を内訳明示した見積書を広く活用することが有効であるというふうに考えております。現在、四十六の専門工事業団体におきまして、業種の特性に応じまして標準見積書を作成をしていただいております。
国土交通省といたしましても、この事業主の負担を減らすことを狙いといたしまして、法定福利費を内訳明示をした見積書の作成マニュアルというようなものを作成いたしまして、ホームページでも周知をしているところでございます。
さらに、今後、今御指摘ございましたように、小規模事業者に対しましても見積書を活用していただく必要があるということでございまして、この小規模の事業者にも使いやすい簡易版のマニュアル、こういうものの作成も進めているところでございます。
また、今年の十一月から全国十か所で中小の事業者向けに、法定福利費の算出方法でございますとか見積書の作り方について分かりやすく解説する研修会というようなものを開催を予定をしてございます。この研修会では、社会保険労務士協会の皆様方にも御協力をいただきまして、この参加企業への個別相談の場も設けましてきめ細かく対応したいというふうに考えております。
このような取組を通じまして、小規模事業者に対しましても丁寧に対応しながら、法定福利費を内訳明示した見積書の活用の促進を図っていきたいと考えております。
○行田邦子君 実に多くの小規模事業所の存在によって成り立っているのが建設業界ですので、こうした小規模事業所がしっかりと法定福利費を請求できるような、そのような対策を更に進めていただきたいと思っております。
こうした標準見積書を使って法定福利費分を元請に請求する、見積書を出すということがなされたにしても、実は、元請が払ってくれない、あるいは元請によっては態度が統一されていないといったことも、恐らく一次下請ぐらいの企業だと思いますけれども、何社かから最近私自身が直接声を聞くことがあります。
法定福利費の元請からの支払のケースとして、大きく四つのパターンに分けることができます。一つ目は、社会保険等に加入している証明書をあらかじめ提示すれば現場の入場日数に対して決まった金額を支払うと、これは法定福利費を払うケースということです。二番目が、全体の工事費に対する法定福利費の割合を元請が決めて支払う、一部だけ支払いますよといったようなケースもこの②に含まれます。三つ目なんですけれども、法定福利費を支払うと言いながら同額かそれ以上の値引きを要請するという、この見積り作成例でいいますと法定福利費は約二百七十五万ですので、二百七十五万の法定福利費は払うけれども三百万まけろということを言われてしまう、一方的に言われてしまうというケース。それから④は、法定福利費が外出しである人件費単価に法定福利費を含ませろというようなことを言う、この見積りでいいますと組立て人件費は単価が三万七千六百九十円ですけれども、そこに法定福利費は大体一五%乗っかるはずですが、その一五%を含ませろというようなことを言う元請がいるということであります。
そこで、局長に更に伺いたいんですけれども、こうしたその法定福利費の支払の実態についてどのように把握をされていますでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) この見積書の活用の状況につきまして、私どもアンケート調査を行いまして、その活用状況の把握に努めております。
幾つか調査をしておりますけれども、最新の調査、これが昨年の十一月に行いましたアンケート調査でございますけれども、その調査をちょっと御紹介させていただきますと、回答をいただきました会社が大体千六百社でございます。このうち、法定福利費を内訳明示した見積書をほとんど又はおおむね提出している企業といいますのが全体の大体四五%ほどでございました。前の年の調査が三二%でございましたので、一年間で一・四倍ぐらいには増えてきていると、こういう状況でございます。
さらに、今御指摘がございました、ちゃんと払ってもらっているかどうかという点でございますけれども、この見積書を提出した結果といたしまして、約五割の企業が法定福利費を含む見積金額全額が減額されることなく支払われる契約となったということでございまして、残りの部分は、やはりちょっと減額されたりとか、その今御指摘ございました、ほかの部分がちょっと削られたりということがあったようでございますが、約半分は全額を支払われたという結果になってございます。
この調査は今年も行うことを予定しております。今御指摘ありましたようなことも考慮しながら、より充実した実態把握に努めていきたいと考えております。
○行田邦子君 今年行われている調査では是非改善が見られることを期待したいと思いますけれども、それにしましても、やはりこういったアンケート調査ももちろん必要ではありますけれども、こうしたアンケート調査だけではやはり問題点が浮き彫りにならないのではないかと思っております。
そしてまた、国交省では最近、建設大手二十社に対するヒアリングというのも行っているようでありますけれども、こうしたいわゆる発注元あるいは元請に対するヒアリングももちろん必要ですけれども、やはり私は、下請に対する定性的な生の声を聞くというようなヒアリングの機会、あるいはこうした下請の実態が分かるような、そういうその声を聞くチャンネルというものが国土交通省としても持つべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(石井啓一君) 社会保険の加入を進めるためには、加入のための原資となる法定福利費が元請企業から下請企業に適切に支払われることが重要でございます。その支払の実態については、アンケート形式の調査のみならず、現場の生の声をできる限り集めて対応しながら進めることが重要であると考えております。
このため、社会保険未加入対策の取組は、元請団体、下請団体、労働者団体などと行政から成る社会保険未加入対策推進協議会を中心といたしまして、業界の声を聞きながら進めております。また、全国で建設企業を対象とした社会保険未加入対策に関する説明会も開催をしておりまして、その際、地域企業からの声を聞くことにも努めております。
こうした場において、例えば小規模の下請企業などでは、見積時の法定福利費の算定や明示の方法が分からないという声もございました。こういった意見も踏まえ、簡易版の、今、法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順の作成を進めているところでございます。
また、本年の七月には、社会保険労務士連合会に御協力をいただきまして、各都道府県ごとに社会保険労務士による相談窓口を設置をしているところでございます。さらに、各整備局等には、不当な下請取引や法令違反情報を積極的に収集するため駆け込みホットラインを設けておりまして、問題を把握した場合には立入検査等を行い、個別に指導を行っております。
あらゆる機会を捉えて、下請企業の声にも耳を傾けながら、社会保険の加入促進にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
○行田邦子君 今の大臣の御答弁伺っていて、大臣も、法定福利費がしっかりと支払えていないのではないかという問題意識、共有をされているかと思います。省を挙げて是非取り組んでいただきたいと思います。
下請の業者の声を聞いていますと、中にはこれは下請いじめじゃないかと思うような、このような話も聞かれます。ただ、建設工事については、下請法の対象とならずに、建設業法で規制されているということです。建設業法の第十九条の三ということでありますけれども、不当に低い請負代金の禁止ということであります。不当に低い請負代金の禁止ということで、そこには、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならないということなんですが、その原価の対象となる一つが法定福利費ということで、通常必要となる原価として法定福利費は認められているということであります。
ですから、不当にあるいは一方的に法定福利費を削減するというようなことをした場合は十九条の三違反になるおそれがあると思いますけれども、この十九条三の違反の罰則規定と処分件数を教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(谷脇暁君) 今御指摘がございました建設業法の規定でございますけれども、今ございましたように、「原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。」と、こう規定されているわけでございます。その趣旨は、注文者が自己の取引上の地位を不当に利用して請負人に不当に低い請負代金を強いることを禁止していると、そういうことでございます。
さらに、この条文に続きまして建設業法の四十二条という規定がございまして、その中には、先ほどの条文、建設業法第十九条の三の規定に違反している事実があり、その事実が独占禁止法第十九条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法、同法といいますのは独禁法ですけれども、独禁法の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができるとされておりまして、建設業法と独禁法の両方の違反が認められた場合には、その措置を公正取引委員会に請求するということでございます。
この趣旨は、行政の一元化を図るため、監督処分等については独占禁止法の手続に委ねているということでございまして、したがいまして、建設業法第十九条の三の違反については建設業法上の罰則、監督処分の対象となっていないということでございまして、したがいまして適用もないという状況でございます。
○行田邦子君 建設工事については、下請法ではなくて建設業法で見るということになっているにもかかわらず、建設業法での罰則規定がないということは、私は、これはこの十九条三が形骸化してしまっているのではないかというふうに思っております。ほかの業法でもあるような、例えば行政指導をし、悪質な場合には勧告を出し、あるいは営業を停止する、さらには、悪質な場合は社名の公表をするなどといった、こういった仕組みがあってもよいのではないかというふうに思っております。
公正取引委員会に国交大臣や都道府県知事が措置請求するというのは、これは条文を見る限りでは非常にハードルが高くて、実績もゼロということですので、この点も是非実効性のある法律の運用といいますか、をしていただきたいというふうに思っております。
そして最後に、厚生労働省にも来ていただいていますので伺いたいと思います。
今、建設業界におきましては、国交省を挙げて社会保険等の未加入対策を推し進めているところでありますけれども、今建設業で行っていることというのは建設業の特性を踏まえた上での対策ですけれども、必ずしもほかの業界にも当てはめることができるとは思いませんけれども、こうした建設業で行っているような取組につきましても、ほかの業界においても行うことができるのではないかと私は思っておりまして、業種ごとの未加入状況をまず把握することが必要だと思いますが、どのように把握をしているのか、そして業種ごとの対策を講じるお考えがあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(伊原和人君) お答えさせていただきます。
厚生年金の未加入事業者に対する適用促進につきましては、低年金の防止という観点からも重要でございますし、企業間の公平な競争を確保するという観点からも、業界の健全な発展に資するという点で大変大切な取組だと考えております。こうした意味で、厚生労働省におきましても、この加入指導というのに努めておりまして、昨年度は九・三万事業所を適用しまして、平成二十二年度の約十九倍の加入実績を上げております。
そういう意味で、今一生懸命取り組んでおるんですけれども、御指摘いただきましたように、未加入対策の実施に当たりましては、業界、業種の特性を踏まえた対応も必要だと考えております。現在、厚生年金の適用の可能性のある事業所、約六十二万事業所に対しまして実態調査を行っておりまして、その中で業種についても把握することとしております。本年度内にはこの実態調査の集計、分析を行いまして、その結果を踏まえて関係機関や経済界と連携した対応を考えてまいりたいと思っております。
○行田邦子君 建設業界に戻りますが、建設業界におきましては、未加入者を入場制限するとかあるいは下請にしないといった、そういった対策と併せて、是非法定福利費を支払わせるというようなことを強力に推し進めていただくことをお願いを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。