平成26年06月03日 法務委員会
○行田邦子君 みんなの党、行田邦子です。よろしくお願いします。
現在の少年院法は、昭和二十三年の制定以来、抜本改正のないまま六十五年を経て現在に至っています。内容は非常に包括的、概括的なものとなっているわけでありますけれども、少年院、また少年鑑別所の管理運営や、それから在院者の処遇について、多くの事項につきまして法務省令やまた通達等に委ねられているような法律となっています。
そこで、まず法務大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、なぜ、この現行の少年院法なんですが、多くのことを法務省令やまた通達に委ねて法定化せずに来たのか、その理由をお聞かせいただけますでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 委員のおっしゃるように法務省令や通達によって補われてきたわけですけれども、その理由として、一つは監獄法がなかなか改正ができなかったということがございまして、そういう状況の中でこの少年院等の少年施設の管理運営や少年の処遇について下位規範で補ってきたわけですが、これで実務を運用してきた。このことは、少年院の矯正教育とかあるいは鑑別の実務は、かなり専門的、技術的な、細かなことまでわたるものが多い、専門的技術や知識が要る場合が多いわけですので、また、かなり個別性の強い処遇をしなければいけないという業務もございまして、よく言えば下位規範で柔軟に対応してきたという面がございます。
そして、広島少年院事件が起こるまでは、度々申し上げておりますように、この権利関係であるとか、それから第三者の目が通りにくい欠陥というようなものが余り浮かび上がってこなくて、あの広島少年院事件が起こって初めてそういう問題点が明らかになってきたと。それまで十分そのことを意識しないで来たという面もあったのではなかったかと、このように思っております。
○行田邦子君 少年の社会復帰、また更生ということを目的としているわけでありますので、それぞれの少年の状況や個別の事情に専門的に対応していくということで柔軟性を持たせていたということだったと思います。
そして、今大臣からの御答弁の中にもありましたけれども、この少年院法を抜本改正するきっかけとなった大きなものが、やはり平成二十一年四月に発覚しました広島少年院における不適正処遇事件だったというふうに思っております。
そこで、また大臣に伺いたいと思うんですけれども、この事件、四人の教官が在院者に対して殴ったり、また足蹴にしたりといった非常にひどい暴行を与える、また紙おむつをはくことを強要したりとか、あるいは舌をつかんではさみの刃を押し当てるといった、これはもう信じられないような残忍な虐待行為に及んだということが、百数十件でしょうか、発生しているというようなことでありました。私も当時、報道を聞きまして、接しまして、非常にショックを受けた事件であります。
この事件がきっかけで今回の法改正に至ったというふうに思いますけれども、この事件がなぜ起こったのか、どのように調査をし、また分析をなされているのでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) この事件によりまして矯正行政の信頼は大きく失墜をいたしまして、もう極めて遺憾な事件でございました。
それで、この原因として、いろいろ中で議論などはしたわけでございますが、原因として、まず、それは職員の人権意識とか服務意識に問題があったということはこれは当然のことなんですが、そういうことがあったわけでございますが、もう一つはやはり、この事実が長年にわたっていたのに表に現れなかったという、それから、何となくそういうことがあるんじゃないかという兆候みたいなものもあったけれども表に現れなかったということが極めて大きな問題でございました。
それで、結局のところなぜ発覚しなかったのかということを詰めていきますと、一つは、不服申立てというのが現行法にもあることはあるんですが、それが十分機能しなかったということ、それからもう一つは、施設運営が閉鎖的であって第三者の目が届きにくかったということがあったと、総括をいたしますとそういうことでございます。
○行田邦子君 大臣の御答弁のとおり、私も同感しておりますけれども、やはり職員の人権意識というのが欠如していたというふうに、この事件の報告書を見ても思わざるを得ません。また、その教官だけではなくて、施設、少年院の院長を含めた幹部職員のその管理能力といいますか責任感というのも、残念ながら欠如していたのではないかなというふうに思います。そしてまた、少年院という施設が閉鎖的で第三者の目がなかなか行き届かなかったといったことや、あと、院長に対する不服申立てというような制度がうまく機能していなかったことによって、長年こうしたことが行われていることが表面化しなかったということだというふうに思います。
そこで、そこをいかに改善していくのかというのがこの今回の改正法案、新しい法案の趣旨だと思いますけれども、個々にちょっと質問していきたいというふうに思います。
まず、第十四条についてなんですけれども、第十四条には、「少年院の職員には、在院者の人権に関する理解を深めさせ、並びに在院者の処遇を適正かつ効果的に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修及び訓練を行うものとする。」というふうになっているわけでありますけれども、具体的にどのような研修を行うことになるんでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
少年院の職員と申しますのは、やはり、少年が暴れたり、いろんなことをすることがあることがございますので、直接的な有形力の行使ということも不可避、避けられない場合がございます。ただ、それについて、やはり在院者の人権に対する配慮がないがためにそういった広島事案のようなことが起こったんだろうというふうに考えておりまして、そういった趣旨で、この少年院法第十四条は、在院者の人権に関する理解を深めさせる研修等の実施について法律上規定をするということが大きな意味があろうかと思います。
それで、現在でも、午前中にも申し上げましたけれども、在院者の人権の尊重を図る観点から、憲法ですとか、あるいは人権に関する諸条約を踏まえた在院者の人権に関する講義とか、行動科学的な視点を取り入れた研修を実施しているところでございますけれども、まず、広島少年院事案について、新たに始めたというか考え出された研修というのが幾つかございますので、それをちょっと申し上げたいと思います。
こういった広島少年院の暴行事案、暴行等の不適正処遇を行ったことを受けまして、法務教官のうち少年院で一定の勤務歴のある職員を対象にしまして人権意識及び処遇技術の向上を図るための集合研修を実施したと、言ってみれば再研修をやったといったことがまず一個ございます。それから、あと、平成二十二年度からは、他の少年院における処遇の状況等を経験する機会を付与するために他施設との交流研修を新たに実施したと。自分の施設だけではやはり偏った知識とか訓練になってしまいますので、他の施設のそういった実情を見て、そういった訓練を平成二十二年度から始めたということでございます。
今後ともそういった工夫をしながら、やはり在院者の人権を尊重するそのための研修、訓練というのは必要でございますので、続けていきたいというふうに考えております。
○行田邦子君 是非、この新しい少年院法が成立した後、一層、人権意識を職員に対して強めていただくよう研修を怠らないようにお願いしたいと思います。
次の質問に移りたいと思いますけれども、先ほどの大臣の御答弁にもありましたけど、少年院という施設の閉鎖性といったものも指摘がなされています。そこで、少年院の運営の透明化ということを図っていく必要が、広島少年院で起きたこのような事件を起こさないためにも必要だというふうに思っております。
そこで、政府参考人に続いて伺いたいと思いますけれども、この法案では少年院視察委員会を各少年院に置くというふうになっています。なぜ合同で、例えば全国一つの視察委員会を設けるとか、あるいは、幾つかの少年院あるいは少年鑑別所をまとめて合同で視察をするような委員会を設けるとせずに、それぞれの少年院に委員会を置くというふうにしたのか、その理由をお聞かせいただけたらと思います。
また、さらに、その委員の人選、これが非常に大切かと思うんですけれども、どのように行っていくのか、そして、この委員会が実効性のあるものとして機能するように、その視察などの活動の補助、サポートを誰が行うのか、教えていただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
まず、各少年院ごとに置くということとした理由でございますけれども、今回の視察委員会制度の趣旨と申しますのが、施設運営に関しまして広く外部の方に見ていただいて、意見を聞いて、透明性を高めた、国民に開かれた適正な施設運営をするということでございますが、少年院、五十二庁ございますけれども、実は全国に、結構へき地にもあったりしたり、あるいはそこで運営されている運営内容が収容している対象少年によって区々にわたるものですから、それで、むしろ幾つかを一緒にするよりも、やはり各少年院ごとに置いて、そうした方がより広く国民の御意見とかあるいは目が入ると、そういったことを考えまして各少年院ごとに置くということとしたところでございます。
それから、委員の人選でございますけれども、これも、施設運営に関係しております公私の団体、例えば弁護士会ですとか医師会ですとか、そういったところに候補者の推薦をお願いをいたしまして、弁護士とか医師とか、それと、少年でございますので、刑事施設と違って心理の専門家ですとか教育関係者、そういった方から、幅広い分野から推薦いただいて任命をしたいというふうに考えております。
あと、その活動を補佐するための補助者についての規定というのは特にございませんけれども、施設の運営状況を的確に把握するために施設を実際に視察していただく、それから少年と直接面接をしていただく、それから少年から提出された書面について直接見ていただく、あるいは少年院の長から、日々の収容動向ですとか変わったことがあったかとか、そういったことについて報告をさせると、そういった権限をこの視察委員会に持たせておりますので、また、加えて、少年施設の長は何か要望とかあった場合には必要な協力をしなければならないと定めておりますので、そういった点では適正な運営ができるのではないかというふうに考えております。
また、この委員会から述べられた意見につきましては、必要な措置を講じまして、大臣がその概要を公表すると、こういった点でもやはり透明性を高めると。どんな意見があって、どこまでやれて、何ができていないかといったことも公表したいということを考えておりますので、適切に機能するための措置は担保できているのではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○行田邦子君 視察委員会制度が十分に実効性のあるものとなるように期待をしております。
そして、委員の人選については、医師、弁護士、それから心理の専門家、教育関係者だけではなくて、やはり、それぞれの少年院に委員会を設置するわけですので、地域社会との連携といったことも視野に入れて人選を行っていただいた方がよいのかなというふうに思います。
次の質問に移ります。
在院者の不服申立て制度について伺いたいと思います。
広島少年院の事件を受けまして、平成二十一年九月からこの不服申立て制度といったものは訓令によって創設されました。法務大臣及び監査官に対して在院者が苦情を申し出ることができるという制度であります。これ以前にも院長への申立てという制度もありましたけれども、これと並立してといったことに今なっているかと思いますが。
まず、伺いたいんですけれども、現在の不服申立て制度の件数と、それから今現在のこの制度が抱えている課題をどのように捉えているのかと、そして、今回、法に明文化されるわけでありますけれども、そのことによってこの制度がどのように変わるのか、改善されるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
先ほど申しました広島少年院で発生した重大な不適正処遇事案の発覚を受けまして、従来から院長申立て制度というのはございましたけれども、これに加えて、平成二十一年九月から少年院在院者の法務大臣及び監査官に対する苦情の申出制度の運用を開始いたしました。
このいずれの制度についても、少年院において自己が受けた処遇全般について申し出ることができるとするものでございますけれども、法務大臣に対する苦情は書面で申し出るのに対しまして、監査官に対する苦情は施設の職員でない監査官、これは結構ポイントなんですけれども、施設の職員でない監査官に口頭又は書面で直接申すことができるといったことに、訓令で始めましたこの制度については特色がございます。
この制度の運用開始以降本年三月末までの申出件数につきましては、大臣に対する苦情が七百三十二件、申出事項数で申しますと八百三十三件、監査官に対する苦情は二百二十二件で、申出事項数にしますと六百十五件に上っております。
現在もこういった監査官に苦情を申し出る制度というのはございますけれども、やはり、手続や、苦情に対しとる措置等が法律上決められたものではなかったということでございますので、今回、少年院法によって新たに創設されるものにつきましては、法律上これを手続とか制度について明確化をしたということと併せて内容を充実させました。
これ、どういうふうな充実かと申し上げますと、一つ目がまず、自己に対する施設長の措置その他自己が受けた処遇について苦情を申し出ることができる。つまり、子供が、少年が、これはいい、これが悪いなんて考えなくて、自分が受けたことについて何でも言ってもいいんですよということにいたしました。それから次に、原則として処理の結果は申出者に通知すること。それから、申し出たことを、その秘密申出を保障すること。それから、申出をした、理由とする不利益の取扱いを禁止することを明確に規定をいたしました。それで、これについては法務大臣において誠実に処理をいたしまして、違法又は不当な処遇であることを確認した場合においては、必要があると認めるときは当該措置の取消し等を行うこととし、相談員制度も設けることといたしました。
これによりまして、少年の権利利益の救済を図るとともに、適正な施設運営にも寄与できるのではないかというふうに考えております。
○行田邦子君 今御説明いただきました法務大臣に対して申し出ることができる救済の申出についてなんですけれども、第百二十三条を見ますと相談員という条文がありまして、ここでは、少年院の長の指名を受けた少年院の職員が相談員として応じることになっています。
そこでちょっと疑問を感じたんですけれども、少年がいる少年院で、例えば暴行を受けていたりとか、それからひどい待遇を受けていたりということに対して救済の申出をしたいと思っている少年が、その少年院の職員に対して、何というか、心を開いて相談ができるものなのかというのを少し疑問に感じました。
この仕組みですと、なかなか少年が職員に対して相談をするということが難しいのではないのかなと。つまり、広島少年院で起きたような事件、これはなかなか表面化しなかったわけですけれども、この制度だと、同じように、実際に事件が起きていても、不適正な処遇がなされていても、表面化しないままなのではないかという危惧をするんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(西田博君) お答えいたします。
確かにそういった危惧がいろいろ言われておりますけれども、在院者が相談をためらうことがないようにどういった工夫ができるかということでございますが、一番の大きな工夫は、どうしてもそういった不適正処遇をやる部門の職員にはそういったことはやらせないと。そうではなくて、少年を実際に処遇する処遇部門の職員ではなくて、それと関係ない系統の職員、幹部職員をこれに充てたいと。
具体的には、次長とそれから庶務課長というふうな幹部職員を考えておりますけれども、この次長、庶務課長は基本的にはもう処遇にはタッチをしない仕事でございますので、そういった面でちょっと工夫をしたいということと、それから、この職員には守秘義務を課しまして、絶対に秘密を守るような制度とするといったことでこれを補強したいというふうに考えておりますし、それから、何よりも、少年が最初にこの制度をどういうふうに理解をして、どういうふうに使えるのかというのをちゃんと理解をしていないとなかなかうまくいきませんし、相談もあくまで希望でございますので、どういった不服の申立てができるのかというのを、入所したときに、入院したときにオリエンテーションで詳しく説明をして、分かりやすいように説明をして、冊子としてそれも居室に備え付けていつでも見れるような格好にして、そういったことを総合的に考えまして、そういった弊害がないような工夫としたいというふうに考えております。
○行田邦子君 少年が、このような申出をしたらば不利益を被るんではないかといってちゅうちょをするようなことがないように制度を設計し、また運用していただきたいというふうに思います。
それでは、最後の質問になりますが、大臣に伺いたいと思います。
少年の更生、社会復帰ということを目的とした少年院法が抜本的に変わります。やはり、少年の再犯防止、再非行防止、立ち直りということにとっては、保護者との連携というのがとても大切だというふうに私は思っております。強化をしていく必要があるというふうに思いますけれども、まず大臣に伺いたいと思うんですけれども、少年の再犯防止のために保護者との連携をこの新しい少年院法においてどのように強化していくのでしょうか。
○国務大臣(谷垣禎一君) 保護者は少年院におります子供たちの権利や利益の擁護者といいますか、少年の社会復帰や更生のために努力をすべき立場の方であると。それから、子供たちの引受人であることもほとんどの場合がそうですね。ですから、少年、子供たちの改善更生、社会復帰のために保護者との連携というのは極めて重要でございます。
そこで、少年院は、面会等の機会を通じて、子供たちと保護者の、いろんなその関係に問題がある場合がかなりあるものですから、面会等を通じてその関係の改善を図っていくということが大事でございますが、保護者の中には子供たちを監督指導していこうとか、あるいはその意欲が余りない保護者とか、あるいは意欲はないわけじゃないんだけどその能力が余りない方もおられるというのが実際なところでございます。
ですから、職員が保護者の相談に、どうしたらいいんだろうと相談に応じるということとか、あるいは指導、助言をしていくということは極めて大事でございますし、あるいは保護者会とか親子の関わりをテーマとした講習会、こういったいろいろな活動への参加を保護者に促して働きかけていくということも極めて大事だろうと思っております。こういうことは、今後とも新法の下でも当然やっていかなければならないことでございます。
それで、今度の少年院法案では、少年院の長が、退院した者やあるいはその保護者の方々から出院後の、例えば昔の悪い仲間とまた付き合っちゃっているとか、あるいは進路をどうしたらいいだろうかとか、そういう、健全な社会生活を営む上で、相談を受ける場合、職員にその相談に応じさせることができるという規定を新たに設けました。これは、こういったことを少年院の付随的業務じゃなしに本来業務に加えていこうと、位置付けていこうということでございますので、こういう規定を活用して保護者との連携というものを進めていきたいと、こう考えております。
○行田邦子君 私の知り合いで、男性ですけれども、奥さんと離婚して、男の子、息子が少年院に入って、それで面会をして、随分更生してきたと。ところが、やはりお母さんに会いたいということをよく言うと。ところが、離婚しているのでなかなか自分からは言えないと。こういった場合も、十七条では、保護者その他相当と認める者の理解を得るとともにとなっていますので、こうしたケースも踏まえて保護者等の協力を得るようなことを期待したいと思います。
終わります。